クジラの宝箱

絵本や児童文学など、ワクワクするものをまとめるブログです。

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子供時代に帰るブログ。絵本や児童文学を中心に、癒されるもの、ワクワクするものをご紹介します。

『エルマーとりゅう 』大人だからこそ響いた児童文学

エルマーとりゅう表紙
1948年に出版された名作児童文学『エルマーとりゅう』は、エルマーシリーズ3部作のうちの2作目です。

これから初めてエルマーシリーズを読むという方は、1作目である『エルマーのぼうけん』も併せてどうぞ!

www.misuke.jp

 

『エルマーとりゅう』の対象年齢

5才~10才

【読み聞かせ】5~7才

・小学1年生~2年生が楽しめるストーリー。

・文章量的に読み切ることが難しいので、読み聞かせにおススメ。

 

【じぶんで読書】8~10才

・小学3年生~4年生に向いている読書量。

・とくに読み聞かせなどで一度読んだことがある子供であると、知っている内容なので読みやすく、読書体験を楽しいと思えるはず。

『エルマーとりゅう』のあらすじ

「エルマーのぼうけん」で、野蛮などうぶつ達から、命からがらりゅう君を救い出したエルマー。わざわざ自分を助けに来てくれたことに感激したりゅうは、背中に乗って空をとべただけで苦労した甲斐があると話すエルマーに、お礼に旅行へつれていってあげましょう、と提案します。

 

エルマーは喜んでそうしたいところでしたが、家を出てから10日もたってしまっていたので、そろそろ家に帰らなくてはなりませんでした。そこで、エルマーとりゅうは、エルマーの家がある、かれき町に向かって飛んでいくことになりました。

 

しかし、帰り道の途中、だんだんと雲が暗くなっていき、雨がふりはじめ、次第に大嵐になってしまいました。強い風に吹かれて進路は大きく外れていきます。

 

弱っている上に、まだ体力の少ない子どもであるりゅうは、徐々に息が切れ始め、羽は重たくなり、どんどんと荒れ狂う波の上に落ちていきます・・・。

 

はたしてエルマーとりゅうは、無事に自分の家に帰ることができるのでしょうか。

 

ストーリーのポイント

☑かきたてられる想像力

☑相手への思いやりと優しい気持ち

☑困難にたちむかう勇気と知恵

感想

ここからは、すこしネタバレがありますので注意!

 

私が一番心に残ったのは、りゅうとエルマーが海上へと墜落していくシーンのエルマーのセリフです。

 

エルマーは、目をとじて、ちからいっぱい、りゅうにしがみつきました。

それから、「ないちゃいけない、うちのことも、おもいだしちゃいけない」とじぶんにいいきかせました。

 

「ごめんね。やくそくが、まもれなくなっちゃって。」

りゅうは、とぎれとぎれに、いいました。

 

「い、いいんだよ。き、み、だって、いっしょう、けんめい。やったんだもの。」と、エルマーはべそをかきながら、こたえました。 

 

本当は、怖い気持ちと、家族に会いたい気持ちでいっぱいのエルマーでしたが、そんな気持ちをぐっとこらえて、謝るりゅうに「いいんだよ」と声をかけます。落ちていく先は荒れ狂う海の上…。

  

本当だったら相手を責めてしまいたくなる瞬間でも、相手への思いやりを忘れなかったエルマー。

 

このエルマーの健気さと、相手を責めない優しい気持ちに、私はすごく心を打たれました。

 

〈ああ、こなきゃよかったなあ〉と思いたくなるような瞬間なのに、自分のことより相手を優先して声をかけてあげるなんて、なかなかできることではありません。

 

実際に、エルマーは泣いてしまっていました。

まだ9歳の男の子だし、怖くて当然です。

 

それでも慰める言葉をかけてあげられたのは、『エルマーのぼうけん』でノラ猫をやしなってあげたことからも分かるように、エルマーの他者への愛情深さにあるのではないでしょうか。

 

ジョニー・デップが「無償の愛をくれるのは子供と犬だけだ」とインタビューか何かで言っていたのを聞いたことがあります。

大人になった今だからなおのこと感じたのですが、エルマーが危機的状況でこの優しいセリフを言えたのは、まさに「純粋無垢で、無償の愛を持った子どもだったから」こそなんじゃないかなと思いました。

(それでも、涙をこらえきれないところが、やっぱりまだ子供で、健気で純粋で、こちらまで泣けてしまいます。)

 

辛いときや緊急事態こそ、本来の人間性が見える瞬間です。

そんなときに、自分勝手で感情的になってしまうのではなく、相手に優しい言葉をかけてあげられること。

 「いいんだよ」と慰める言葉をかけようとすること自体こそが、人としての大切な何かであり、作者からのとても大切なメッセージであり、美しいシーンだなと思いました。

 

それと同時に、いまの大人になった自分は、絶望的な状況でも相手を慰める言葉をかけてあげられるだろうかとも考えさえられました。

 

私たちは「人としてどうあるべきか」ということや、「何を大切にして生きていけばいいのか」ということを、何も知らない状態で生まれてきます。

 

それなのに、子どものときって、「大切なこと」を初めから知っていたかのように、びっくりするほど鋭いことを考えていたりしますよね。

 

いろんな経験を経て人の「芯」が色づいていきますが、いくら年月を重ねても、こういうメッセージを心に灯し続けられることは、生きていく上で大きな希望になるなと思いました。

最後に

大切なメッセージがたくさん詰まっている児童文学。子供向けの優しい本と思われがちですが、大人こそ読むべきかもしれないと思いました。

 

大人になるほど「本当に大切なこと」が見え辛くなったり、分かっていたつもりなのに分からなくなっていたり、それさえ気づいていなかったりするなあと、自分自身を見直すきっかけになりました。

 

大人も子供も違った角度で楽しめる作品です。家族でご一緒に読んでみてはいかがでしょうか!

 

今回読んだ本

作: ルース・スタイルス・ガネット 
絵: ルース・クリスマン・ガネット 
訳: 渡辺 茂男 
出版社: 福音館書店

 

続編、『エルマーと16ぴきのりゅう』のあらすじもどうぞ。